心理カウンセラーが伝授!ゴミ屋敷の住人が周囲に与える影響と心理的な対応策

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佐藤 栄子
心理カウンセラー

近隣の住宅にも悪影響を及ぼすゴミ屋敷。悪臭が漂うだけではなく、害虫などがわき、ゴミ屋敷の周辺まで「住みづらい環境」になってしまうことがあります。しかし、どうしたらゴミ屋敷を増やさずに済むのでしょうか? ゴミ屋敷の住人が周囲に与える心理的な影響から片付けられない人を救うための心理的アプローチ法などを心理カウンセラーの佐藤栄子さんにお伺いしました。

記事の終わりには「あの人はゴミ屋敷の住人になりやすいのか」をチェックできるテストも用意しました。テストの結果を見て、ゴミ屋敷の住人になりやすい傾向が強いようなら、早めに対処した方がいいかもしれません。

ゴミ屋敷の住人が周囲に与える心理的な影響について

ゴミ屋敷が近隣にあると、臭いだけではなく、虫やネズミ、ゴキブリ、コバエなどがわいて精神衛生上はもちろん、アレルギー反応が起こるなど身体にも良くありません。ゴミ屋敷の存在によって近隣の地価が落ちてしまうこともあります。またゴミ屋敷は放火などによって火災が起こると、燃えやすい物が多くて大規模な火災に発展することもあるのです。最近は一軒家のみならず、マンションの部屋がゴミ屋敷化することもあります。

引越をする場合、ゴミ屋敷の近隣は極力避けたいと思われるでしょう。不動産業界では物件の買主や借主などに対して、物件について重要な事項を契約前に説明する義務があります。買うもしくは借りる物件に隣接するか、かなり近いところに、“外見から明確に判断できるような” ゴミ屋敷があれば重要事項説明の対象になります。しかし、家の中にゴミを隠してあったりして、外からみたらわからないようなケースはその対象にあたらないと判断されることが多いようなので難しいところです。しかも、引っ越した後に近隣の家がゴミ屋敷になってしまった場合は、再び引っ越すなどするしかないかもしれません。

またゴミ屋敷の住人に精神疾患がある場合などは特に第三者が入らないと、逆恨みされてしまうことがあります。特に近隣住人は仕返しされる可能性があるため、直接クレームを言うのは避けた方がいいでしょう。大家さんやゴミ屋敷の住人の身内に間に入ってもらった上で対処した方が安全だと思います。

家族や友人が片付けられない人を救うための心理的なアプローチ

ゴミ屋敷の住人が社会と断絶してしまい、人との関わりから遠ざかると、自分だけの世界をどんどん構築していき、ゴミが溢れている状況が心地よいと感じがちです。

その人が話を聞いてくれる人であれば、心理カウンセラーと同じように「どうしたの?」「何か悩んでいることがあるの?」と話を聞いてあげながら、一緒に部屋を片付けてあげると良いと思います。本人の孤独や恐怖が軽減して、社会との繋がりが感じられると、ゴミを溜め込まなくなることがあるのです。

それが難しいようなら、温泉やスーパー銭湯などに誘ったり、エステに連れて行ってあげるのもいいかもしれません。また女性であればデパートの化粧品コーナーで化粧してもらうのもいいでしょう。そうすることで、キレイな状態、清潔な状態でいる心地よさに気づき「自分を大事にしよう」という意識が少しずつ高まります。その結果、部屋を片付けたくなることもあります。
美容院やマッサージなど、他人に触れてもらうこともいいでしょう。泣いている赤ちゃんを抱っこすると泣き止むのと同じで、人の肌の温もりを感じると「安心感」が生まれ、人との繋がりを感じることができるのです。家族に触られるのは抵抗があったとしても、エステシャンなど第三者であれば、心理的な抵抗も少なくなります。高齢者の場合は、肩もみをしてあげるのもいいかもしれません。

ゴミ屋敷の住人になりそうな人に見られる傾向と対策

出しっ放しの物が積み上がってきたら要注意です。早く問題の芽を摘み取ることが大事なので、部屋を片付けてあげたり「あなたは一人ではない」ということを伝えてあげた方がいいでしょう。しかし、ひとつ注意しなければいけないことがあります。片付けてくれたり、ケアしてくれる相手にその人が依存してしまうことがあるのです。本人を自立に導くことが大切ですから、相手の心理をよく理解したうえで、程よい距離感を保ちつつ、サポートした方がいいでしょう。

「キレイにしたら気持ち良いんだ」ということを自覚し、自分でそれをしたいと思うようにならなければ、再びゴミをためてしまう生活に戻る可能性があるため、心理カウンセラーとしては「物事の受け止め方」「概念」を変えるお手伝いをしていきます。

人間は成長にしたがって、例えば女の子は女の子らしくしなければいけないとか、勉強ができないといけないといった「思い込み」が増えていきます。それはゴミ屋敷の住人にも言えて、親が片付け下手で、汚れた環境に住んでいると、それが“普通”だと思い込んでしまったり、ちょっとした出来事により「自分には価値がないんだ、何もうまくできないんだ、片付けもできないんだ」などと決めつけてしまうことがあります。しかし、記憶というのは、起こった出来事に対して自分で勝手に意味づけをしてしまっていることもあります。過去のことなのでその記憶が正しいかどうか確認はできませんが、カウンセリングによって、「自分にもできる」などのように受け止め方を変えるお手伝いをすることは可能なのです。

家族をゴミ屋敷の住人にしないための「心理的な策」

ちょっとした変化に気づくことです。お風呂に入らない、メイクをしない、服を脱ぎっぱなしにするなど、自分に構わなくなると、部屋にも構わなくなってしまいます。それがサインです。一晩でゴミ屋敷になることはまずありませんが、早めに対処することが大切になります。

最近、図書館やスーパーなどで店員を怒鳴りつけたり、理不尽なクレームをつける人を見かけませんか? 全てがそうではありませんが、「自分はきちんと扱われていない」「自分はいつも損させられている」などといった抑圧された被害意識が強くなると、このような態度になってしまうことがあります。そうすると自分をさらに粗末に扱ってしまうため、結果ゴミ屋敷の住人になってしまう危険性があります。家族が「なんだか最近イライラしているな」「怒りっぽいな」と感じたときは話を聞いてあげたり、リラックスさせてあげることを考えましょう。

しかし、すでにゴミ屋敷になってしまっている場合は専門の業者に頼んで、部屋のゴミを一掃するのが一番です。特に高齢者の場合は、手がつけられない状態に陥っているケースが多く、専門の業者の助けを借りなければ状況は悪化する一方でしょう。

自分がゴミ屋敷の住人にならないためにできること

自分のことが大好きで社会としっかり繋がっている人にゴミ屋敷の住人はいません。自分に自信がなく、片付けができないことに悩んでいるのなら、屋根裏に住んでいた頃のシンデレラのように、なりたい自分にまずなってみることが大事です。

シンデレラは屋根裏でネズミや小鳥の助けを借りて、ぼろ布で仕立てたドレスを綺麗なドレスに見立て、舞踏会で王子様と踊ることを夢見ていました。そんなシンデレラのように「自分がこうなったら、こうしたい」というのを一人で体感してみるのです。例えばお気に入りの服を着て、理想の相手とデートしている気分を味わってみたり、仕事で成功して充実した毎日を送る自分になりきったり・・・。一人の部屋で行えば、誰にも見られる心配はありませんから、思い切り楽しめます。

これは究極に自分を大切にすることに繋がるのです。そういうことを続けていくと、「理想の自分が住んでいる部屋」にゴミを溜め込もうとは思わなくなるでしょう。不思議なのですが、家の片付けをするとなぜか心もスッキリして、溜めこんでいたイヤな感情も浄化され、嬉しい気持ちになる出来事が起こりやすくなります。

そしてもう一つ大切なことは、自分を大事にすることイコール“他人にも大事な自分がある”ということを認めることです。そうすれば、自分のゴミで他人を不快にしないように気を付けるようになりますし、理不尽なクレームをつける人になる可能性も低くなります。それがゴミ屋敷を減らしていく上でも大事なことだと思います。

簡単チェック、あの人はゴミ屋敷の住人になりやすいのか?

家族や友人、知人などがゴミ屋敷の住人なりやすいタイプなのか以下の簡単なリストをチェックしてみましょう。当てはまる項目が多ければ多いほど、ゴミ屋敷の住人になりやすい傾向があるということです。「あの人」を「自分」に置き換えてチェックすることもできます。

●あの人はカバンの中がぐちゃぐちゃだ
●あの人はケアレスミスが多い
●あの人は人とコミュニケーションを取るのが苦手だ
●あの人はジッとしているのが苦手だ
●あの人はしゃべり過ぎてしまうことがある
●あの人は今、自分がやっていることがわからなくなることがある
●あの人の家族は清潔とは言えない暮らしをしているようだ
●あの人は持ち歩く荷物が多い
●あの人は使った物をそのままにしておく
●あの人はレシートを財布にためている
●あの人の部屋は物が溢れていて床が見えない
●あの人はの部屋には物が積み上がっている
●あの人はシミのついた服をよく着ている
●あの人の家には賞味期限切れの食材がいくつもある
●あの人は飲み物を床にこぼしてもすぐに拭かない
●あの人は雑誌や本は捨てられない
●あの人はよく物を失くす
●あの人のちょっとしたことで落ち込みやすい
●あの人は毎朝、時間がないようだ
●あの人は衝動買いをして、その事を忘れてしまっている
●あの人から生ゴミのような臭いがすることがある
●あの人はお風呂が嫌いなようだ
●あの人は自分の部屋に人を入れたがらない
●あの人は一人暮らしで寂しさを抱えているようだ
●あの人は孤独を強く感じているようだ

チェック項目が1〜2の場合・・・「現在のところ問題は見られません」
日頃から整理整頓ができているタイプです。この人はこまめに掃除をしているのではありませんか? ただ、ストレスが溜っているときは要注意。心の隙間をゴミで埋めようとしてしまう危険性がないとは言い切れません。何もやる気が起こらなくなったり、ゴミが溜っても気にならなくなっている様子だったら、悩み事を聞くなどして、ストレス発散のお手伝いをしてあげましょう。

チェック項目が3〜8の場合・・・「やや片付けるのが苦手な傾向あり」
そこまで大きな問題はありません。少しくらい部屋が散らかっていても、あまり気にしないタイプなのかもしれませんね。しかし、忙しい日々が続いたり、過度なストレスを感じているときは注意が必要です。油断しているとあっという間に部屋がゴミで溢れてしまうことがあります。定期的に掃除をする習慣を身につけてもらうことが大切でしょう。

チェック項目が9〜15の場合・・・「気づくとゴミを溜め込んでいる傾向あり」
外でしっかりしている分、自宅でダラダラと過ごしがちなタイプでしょう。物を捨てるのも苦手で、不必要なものを溜め込んでしまうこともありそうです。今はまだ大丈夫かもしれませんが、そのうち部屋がゴミで溢れてしまう危険性があります。ゴミ屋敷化しないためには、必要のないものは潔く捨てる習慣を身に付ける必要があるでしょう。エステや銭湯に連れていくなどして、清潔な状態でいる心地よさを味わってもらうといいかもしれません。

チェック項目が16〜20の場合・・・「一歩間違えるとゴミ屋敷の住人になりやすい」
片付けをするのが得意でないようです。むしろ物に囲まれていると安心するタイプかもしれません。捨てなければいけないゴミ袋をいくつも放置していることも。この先、ゴミ屋敷の住人になる危険性は結構高め。周りがこの人のためにできることは、定期的にこの人の部屋を訪れ、掃除してあげるなどして、交流を持つことでしょう。ただし、自宅にあるゴミに執着しているようなら専門家に診てもらうことをおすすめします。

チェック項目が21〜25の場合・・・「すでにゴミ屋敷かも?危険な領域に入っていそう」
現在、あの人の部屋にゴミが溢れていなかったとしても、ゴミ屋敷になるのは時間の問題かもしれません。冷蔵庫には賞味期限切れの食材がたくさんあったり、物を片付けられない状態になっていそうです。本人も自分の変化に気づいていない可能性大。早めに専門家に相談したり、いつでも業者に頼んでゴミを全て取り除ける状況を作っておいた方がいいでしょう。残念ながらあの人が自ら行動を起こして、自分の問題を解決しようとすることはなさそうです。

いかがでしたか? もしあの人にゴミ屋敷の住人になりやすい傾向が強くあるようなら、あの人の言動に少し注意を向け、なるべく話を聞いてあげるよう心がけるといいかもしれません。あの人の極端な「孤独」や「孤立」を防げれば、ゴミ屋敷の住人になるのを防げる可能性があります。またあなた自身がゴミ屋敷の住人になってしまうかも? と不安な場合は、心理カウンセラーや信頼できる相手に悩みを打ち明け「片付けられない」「部屋を散らかしてしまう」などの根本的な原因を探り、問題を解決していくのも手段のひとつです。

※上記テストはあくまで「ゴミ屋敷の住人になりやすい傾向」を確認するものです。上記項目でチェック数が多かったとしても、必ずゴミ屋敷の住人になるわけではありません。ご参考までにお試しください。

おわりに
一度、ゴミ屋敷になってしまうと、ゴミ屋敷の住人が自ら片付けるという気力や発想が削がれてしまう傾向があります。周辺の住人から度重なるクレームを受けたとしても、全く状況が変わらないというケースが多いのです。下手に文句を言ったり、怒鳴り込んでしまうと、ゴミ屋敷の住人の被害者意識を強めてしまい、暴力沙汰になってしまうこともあります。
近隣の住人がゴミ屋敷の住人から受ける迷惑は計り知れません。

しかし、いずれ誰かが対処しなければなりません。その対処法の第一歩として、ゴミ屋敷の住人になる前に家族や友人などが気づいて、ケアやサポートをしてあげる必要があるでしょう。早い段階で対処できれば、大きな問題へと発展しないかもしれないのです。

ただ、すでにゴミ屋敷になっており、手におえない状態になっていたら、専門の業者にお願いして、ゴミを一掃してもらい一度リセットすることが大切です。また認知症や精神疾患を抱えているようなら、行政や病院に相談してデイケアなどを頼み、定期的に部屋を掃除してもらうようにすることも大事でしょう。

佐藤 栄子
心理カウンセラー

大学卒業後、某大手不動産会社に就職し約20年、主に役員秘書業務を担当
宅地建物取引主任者、秘書検定1級、CBS(国際秘書検定)取得。
秘書業務と並行して衛生管理者(第二種)の資格を取得後職場のヘルスケアを担当、多数の個別相談を受けるうちに心理学の知識の必要性を感じ、民間カウンセリングスクールで心理学全般を学ぶ。
会社を退職後、2008年12月より心理カウンセラーとして活動を開始。
2012年12月に全国統一認定資格 一般社団法人全国心理業連合会 上級心理カウンセラー試験合格。
現在法人3社からのカウンセリング業務委託及び紹介による個人カウンセリングを行っている。

大学卒業後、某大手不動産会社に就職し約20年、主に役員秘書業務を担当
宅地建物取引主任者、秘書検定1級、CBS(国際秘書検定)取得。
秘書業務と並行して衛生管理者(第二種)の資格を取得後職場のヘルスケアを担当、多数の個別相談を受けるうちに心理学の知識の必要性を感じ、民間カウンセリングスクールで心理学全般を学ぶ。
会社を退職後、2008年12月より心理カウンセラーとして活動を開始。
2012年12月に全国統一認定資格 一般社団法人全国心理業連合会 上級心理カウンセラー試験合格。
現在法人3社からのカウンセリング業務委託及び紹介による個人カウンセリングを行っている。

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